レポート事例集

サステナブル・ブランド国際会議2021より。ストーリーで語るサステナビリティ。

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2021年2月24・25日、サステナブル・ブランド国際会議が開催されました。

多岐にわたるセッションの中から、ストーリーとサステナビリティに関する2つのセッションに関して、ポイントを絞ってセッション内容をご紹介します。

■セッション「ストーリーで語るサステナビリティ」

サステナビリティをストーリーで語るコミュニケーションを推進している株式会社セールスフォース・ドットコムの鈴木氏と、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社の能勢氏に加え、企業のストーリー作りの支援をしている一般社団法人 NEW HEROの高島氏による対談では、 企業がサステナビリティに関するストーリーを語るメリットやストーリーづくりのポイントが紹介されました。

登壇者
株式会社セールスフォース・ドットコム 鈴木氏
MS&ADインシュアランスグループ ホールディングス株式会社 能勢氏
一般社団法人 NEW HERO 高島氏


ストーリーという手法を活用するメリット

能勢氏:ストーリーテリングは抽象的だったり、概念的なことを伝えるのに有効だと思います。例えば、MS&ADインシュアランスグループではCSVを経営の軸に置いたのですが、それが何を意味するのかが分からない社員がいました。ちょうど同じ頃にSDGsやESGもメッセージに入ってきたこともあり、これらも含めて何を意味するのかを伝えるために、ストーリーテリングが効果的でした。

鈴木氏:セールスフォース・ドットコムでは、社会的課題は社員一人だけでは解決できないという課題感があり、ストーリーを使うことで社員だけでなく多くのステークホルダーの方にも「感じてもらう」ことができるのではないかと考えました。アーティストやコンサルタントなど幅広い分野で活躍の8名が登場していろいろなメッセージを発する映像を作成したところ、メッセージの受け取り方や響いた言葉は人によって違いがあり、より多くの方に届けられたのではないかと思います。

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高島氏:ストーリーテリングには、なんとなく感じている不満や不安を「課題」として顕在化して共有できるという魅力があります。 例えばSDGsに関する研修などでは、事業がどう関わっているかという知識を提供することが多くなっていますが、それだけでなく社員に「自分の会社の良いところは何か?」を聞いて考えてもらい、「自社では、こういったことをすると良いのではないか?」と自分事として置き替えて考えてもらうことも有効です。


ストーリーテリングの課題と今後にむけて

高島氏:最近は「企業として何をすれば良いか」と悩む方が多いように感じています。まずは社内で課題を顕在化させ、それを共有し、各地域で古くからその社会課題に関わってきたNPOと手を取り合って、課題解決に取り組む姿こそがストーリーになります。それを記録して発信するだけで、社員のモチベーションにもつながりますよね

能勢氏:ストーリーを伝える映像を作成した際、東日本大震災があったこともあり、映像として水没した家などを映してはいけない(PTSD発症や被災された方の気持ちを慮って)といった空気もありましたが、社会課題をなるべく分かりやすく伝える方法を丁寧に検討した結果、そのような映像も採用しました。 また、コミュニケーションを進める上では「価値創造ストーリー」という「軸」が定まっていたことが、非常に有効だと感じました。今後もトップメッセージをはじめとして各種媒体で同じメッセージを発信していきます

MS&ADインシュアランスグループ
より良い未来への「課題」と「提案」の映像は こちら

鈴木氏:当社でもストーリーを伝える映像を作成する際、LGBTQを含め、多様な方に参加いただきましたが、「そこまでやるのか」といった意見もありました。しかし、マネジメント層が半年かけて議論した結果を表現したものになっていて、CMなどを通じて公開することに躊躇する者はいませんでした。今後もパートナーシップを作りオーナーシップをもって、前に進んでいくことが重要だと考えています。

株式会社セールスフォース・ドットコム
「次の世界へ」の映像はこちら

■セッション「パーパスがつくる ぶれない経営」

企業は何のために存在するのか。企業理念や存在意義としてのパーパスがあり、社員がそれを実践していることでぶれない経営を行うと語る3社の対談では、事業とぶつかる場合や、社内に浸透させるポイントなど、今後パーパスの社内外への浸透に取り組もうとする企業にとって参考になる内容が多くありました。

登壇者
フィリップ モリス ジャパン合同会社 濱中氏
ネスレ日本株式会社 嘉納氏
株式会社竹中工務店 樫村氏


パーパスが重要と認識してはいても、事業と対立するようなケースは無いのか?

樫村氏:竹中では1971年に「設計に緑を」という考えを文章化しましたが、当時は公害があったものの環境よりも効率が優先される時代で、さまざまな葛藤があったと思われます。その中で「これからは環境の時代」と建築主とともに判断して建てられたものだけが、今でも残っています

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嘉納氏:ネスレでは、パーパスを体現するために、味や香りはそのままに、砂糖や塩を減すにはどうするか。パッケージを持続可能なものにするためにかかるコストを長期的な投資と解釈できるか、を考えなければなりませんでした。 キットカットでは砂糖を減らした製品化などがありますが、事業はお客様に買ってもらってこそ持続可能なものと言えるので、悩むところは多いです

濱中氏:フィリップ モリス ジャパンでは「煙の無い社会を目指す」というビジョンを掲げながらも、今でも継続して紙巻きたばこ販売しているという矛盾を抱えています。紙巻きたばこからの収益を、煙のない製品の開発などに投下しているので、紙巻きたばこ市場で競争力を持つことも収益と言う面で重要なのです。 また煙の無い製品を使って頂きたいのは、現在紙巻きたばこを買っている方なので、箱の中にメッセージを入れたり、紙巻タバコをコミュニケーションのインフラにしています。対立するものと捉えるのではなく、販促ツールとして活用しています


パーパスを浸透させるポイントと今後に向けて

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濱中氏:「煙の無い社会を目指す」というビジョンと方向性が打ち出されて以降、会社の資源を煙の出ない製品に向けています。例えば、販促費用では煙の出ない製品に70%以上投資しており、社員も業務の中で重要性を実感しています。このように、指標を開示することも浸透に寄与していると思います。
また日本では特に加熱式たばこの市場が拡大していて、これに関わっていない従業員は一人もいません。また他の業界からビジョンに共感できる人材を招いていることも、ビジョンが社内に浸透している背景かもしれません。
社会のひずみが顕在化している今、いろんな企業がどうインパクトを及ぼせるか考えていくことが重要だと思います。インパクトが大きければ大きいほど、社会的課題解決に大きく貢献できると思います

嘉納氏:パーパスの体現のためには、トップマネジメントの強いコミットメントが重要だと思います。また、野心的な目標を社内外に発信することで、本気度が伝わると思います。
その他ネスレでは、社内表彰制度として「イノベーションアワード」というものがあります。この中で、社員一人一人が新しい社会を想定し、顧客に生じるであろう問題を設定し、その解決策を考えるという取り組みをしています。これが社会課題の気づきやパーパスの意識付けになっていると思います。
今後に向けては、マーケや研究関連だけでなく、サポート部門やお客様にもパーパスを伝えることで、パートナーシップが生まれていくものと考えていまして、今後は社外のパートナーシップを促進するために、社員一人ひとりが伝えやすくなるツールを作りたいと思っています。

樫村氏:トップのコミットメントを見て入社するケースも多いので、非常に重要だと感じています。また2019年の周年行事では、先人の声などの動画や社是の成り立ちを冊子にして、今の社員に伝えたりしました。周年行事といったイベントは、理念などを共有・再認識するよい機会になっていると思います。
今後は「グローバルアカデミー」として、ローカルスタッフにも現地語で展開したいと考えています。

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