レポート事例集

サステナブル・ブランド国際会議2021より。サステナビリティを経営に組み込むポイント。

csr-44512

2021年2月24・25日、サステナブル・ブランド国際会議が開催されました。多岐にわたるセッションの中から、今回はサステナビリティ経営の浸透がポイントとなった2つのセッションについてご紹介します。

セッション「サステナビリティが中心にある企業経営」

「教育」というSDGsにも通じる事業分野を通じてサステナビリティに取り組むベネッセの足立氏、皮膚再生から始まり30年以上前からサステナビリティに取り組んでいる日本ロレアルのブリュア氏、金融という機能を通じてサステナビリティの支援に取り組む大和証券グループの田代氏による対談では、サステナビリティに関する社内浸透のポイントや効果、パートナーシップのコツなどが紹介されました。

登壇者

  • 株式会社ベネッセホールディングス 代表取締役社長 CEO安達保氏
  • 日本ロレアル株式会社 代表取締役社長 ジェローム・ブリュア氏
  • 株式会社大和証券グループ本社 取締役 兼 執行役副社長 海外担当 兼 SDGs担当 田代桂子氏

社内にサステナビリティを浸透させるポイント

田代氏:大和証券グループでは昨年から具体的にSDGsに取り組み始めたところですが、ビジネス目標を持っている部長レベルの社員と、社会課題への感度や理解度の高い若手社員との意識の差をどう融合していくかが課題となっています。
かつては社会課題解決と言うと、「=社会貢献」となることもあり、これらのテーマに若手が盛り上がっても中堅レベルの社員が反対し、うまく活動が進まない時期もあったかもしれませんが、今は個人・組織問わずお客様からサステナビリティについて問い合わせがあるので、社内で対立することは少なくなっています。

安達氏:ポイントは2つあります。1つはもともと企業理念がしっかりと浸透しているので、そこからボトムアップで社員からの意見をすくい上げるようにしていることです。ベネッセでは社員一人ひとりの声を聴いてサステナビリティビジョンを策定したため、「サステナビリティ」が浸透しやすい状況ではありました。
もう1つは、1965年以来毎年実施している創業日朝礼で、社員が自分のことばで「自分のよく生きるとは」を発表する機会を設けていることがあります。社員一人ひとりが自分の言葉でサステナビリティを語ることで、サステナビリティに対する社員の納得感にもつながっています。
お客様の困りごとを考えて、それにお答えするこという素地があったので、コロナでの休校措置が木曜に発表されると、その翌週の月曜には無料の学習ツールを提供することができました。

イメージ

ブリュア氏:ロレアルでは毎年社員にアンケートを取り、「ロレアルはサステナビリティに貢献していると思うか」を聞いています。直近では約8割はYes、残りの2割りはNoでした。その残りの社員に納得してもらわなければならないと考えており、トップダウンでは会社としてサステナビリティに関するイニシアティブに参加したり、社員向けにチャンピオン制度(サステナビリティ活動の表彰制度)やマネジャー自身がサステナビリティのターゲットを設定する制度(金銭的イニシアティブを伴う)を設けたりしています。
また、グローバル企業なので、パリの本社からグループ企業へ枠組みや目標を提供していますが、反対にグループ各社から本社へは地域に合ったサステナビリティへの貢献事例を共有してもらっており、お互い良い刺激となっています。

社内だけでは取り組みが進まないような場面での、パートナーシップのポイントは?

ブリュア氏:ロレアルのパートナーシップはサプライヤーや小売業者の方など、ビジネス上のつながりから始まっています。サプライヤーにはロレアルのサステナビリティ方針を、小売業者の方などにはサステナビリティの貢献を中心に説明しています。
特に小売業者の方の多くはサステナビリティへの意思が高く、自身の顧客にサステナビリティに貢献する商品を勧めたいと思っているので、社会貢献のためというよりも、ビジネスのためにサプライヤーや小売業者との連携ができています。

安達氏:教育分野で非常に重要なパートナーは学校の先生方なので、どのような先生と、どのように協力するのが最も有効かを考えています。 また地域への貢献も大切にしていて、瀬戸内海の直島では美術館を支援しています。この取り組みによって自然と建築と現代アートがかけ合わさり、そこが企業理念である「よく生きるとは何か」を考える場所になっています。さらにそこへは海外のお客様も来ますので、アートや島の文化・自然などを島の方自身が紹介してくれるようになり、それが地域の活性化につながって、町の方の笑顔が増えました。地域社会とのパートナーシップがうまくいっている事例です。

田代氏:日本証券業協会が中心となっている業界内でのパートナーシップだけでなく、商品を通じたパートナーシップも重要になっていると思います。
例えば再生可能エネルギーにも投資する商品がありますが、その投資判断には専門的なノウハウを持つ組織とのパートナーシップが重要になっています。「どこに、いつ、どう資金を提供するのが効果的か」といった判断は専門性が高いNGOからの意見を取り入れたり、そういった機関の方に投資先の審査員になってもらったりしています。 社内だけでは不可能でも、パートナーシップを通じて実現できることがあると実感しています。

セッション「持続可能な社会へ社員一丸となって未来構築を進める企業は、一体何が違うのか?」

本セッションの登壇企業には、サステナビリティの浸透において先述のセッションとはまた異なるテーマでの対話となっていました。化石燃料が事業の柱となっている日揮ホールディングスの秋鹿氏、競争が激しい業界に属するライオンの小和田氏、経歴が異なるメンバーが多く所属しているEY Japan牛島氏の対談では、サステナビリティの推進部門が突き当たる壁を乗り越えるために必要な力や、パーパスの策定におけるポイントなど、手探りであっても着実に持続可能な社会に向けた従業員への意識付けを行っていくためのポイントが中心となりました。

登壇者

  • 日揮ホールディングス株式会社 サステナビリティ協創部 常務執行役員 / サステナビリティ協創部長 秋鹿正敬氏
  • ライオン株式会社 サステナビリティ推進部部長 小和田みどり氏
  • EY Japan 気候変動・サステナビリティサービス パートナー 牛島慶一氏
  • サステナビリティ担当部門に求められる力とは?

    秋鹿氏:日揮ホールディングスでサステナビリティの部署が立ち上がったのが2019年ですので、まだ日は浅いのですが、現状の「化石燃料に関連する事業」だけでは社会課題解決に貢献できないことをメンバーで認識するようになりました。R&D部門出身のメンバーには既にそういう「知識」はありましたが、ビジネスにはつながっていない状況でした。 社会の変化に伴って社内の各部門が協力してビジネス化を進めるようになってきており、従業員一人一人も、事業の軸が変わるという感覚を持っているメンバーが増えてきました。

    イメージ

    社内理解のためには各部門に個別説明に回りました。当初は「そんなことやって何になるのか」「社会貢献活動と同じではないか」という声も多かったのですが、ニュースで多岐にわたる社会課題が取り上げられるようになったこともあり、理解が進み、今ではサステナビリティ協創部に入りたいという声も出てきています。
    社会課題を、ビジネスを通じて解決していくのが日揮なのだ、というメッセージは私たち自身も勇気づけられています


    小和田氏:ライオンでは、サステナビリティ推進部が様々な取り組みをしていましたが、他部署の社員にあまり認知されていな閉じた部署だったため、社内の認知拡大が課題となっていました。経営陣に関与してもらうために経営層向け研修を実施したり、全社浸透のための会議体の設置をはじめ、各部署に個別に説明して理解を促すようにしました。
    業界内ではサステナビリティの取り組みが進んでいる企業が多いため、同業他社の商品も扱う販売店の営業担当をしている社員は「他社に比べてライオンは遅れている」と自信を喪失している状況でした。そこで、自分の会社もサステナビリティに取り組んでいることを理解してもらうことが重要でした。

    イメージ


    ライオンは歯ブラシを売るだけの会社ではなく、「健康な習慣づくり」を目指す会社として、デジタルを活用した新しいオーラルケアのサービスや、子どもたちが楽しく歯磨き習慣を身に付けられるように、遊びながら歯磨きができるアプリ連動型の歯ブラシなど、さまざまな取り組みを伝えています。


    牛島氏:社内浸透にあたって苦労したのは、言葉遣いや言葉選びでした。EYには様々な経歴を持つ社員が集まっています。同じ言葉でも部門や人によって背景理解が異なるので、それぞれの部門にとって適切な言葉選び(トランスレーター)が重要だと感じました。また活動を推進する際は、いかに小さい成功でも目に見える形にしていくことや、巻き込み力をどうつけていくかもポイントでした。

    パーパスを通じた取り組み

    イメージ

    小和田氏:商品のブランド価値を考えると、スペックの比較による競争は限界にきています。そこで差別化を図るためにはブランドの存在意義をストーリー化していく必要があると考え、「ReDesign」というパーパス(存在意義)を策定しました。
    ところが理念やパーパス、ビジョンなど色々な言葉があって、当初は腹落ちが難しい状況でした。特に商品のブランドのマネジャーは製品の良さを最大限に伝えたい気持ちが強く、それスペックではなく「パーパスを伝えよう」とすると不安感が当初はありました。2017年頃に社長が直接社員に説明する場を設けて、理解を促しました。

    秋鹿氏:会社として社会課題解決のために、「社会インフラとして役立つ仕事をしていく」ことを決めました。コーポレートスローガンとしての新しいパーパスについて、社長と従業員が対話をしているところです。
    対話の中で、企業グループの存在意義について話し合っていて、相互理解が深まることも期待しています。

    牛島氏:変化が激しく不確実性が高い時代なので、目印としてのパーパスがあると社員はそれを目指していけると思います。人材の多様化も進んでいるので、自分たちが会社にいることの誇りとしても、シンプルなパーパスが重要だと思っています。
    ライオンさんは、歯ブラシではなく「歯みがき習慣」を提供する会社なのだという大きな価値変換を遂げられました。パーパス経営は生活者への目線を変え、それが企業価値の向上につながります。
    日揮さんは、廃棄物を資源にするという、社会と企業のウィンウィンとなる点に資本投下されているのが素晴らしいと思います。難しいのは、社会的価値を生み出せば、経済価値が絶対ついてくるとは言い切れないことです。ですので、このように事前に、社会的価値と経済価値とを戦略的に結び付けることが重要です。

    イメージ

    【関連記事】

    イメージ

    このページの先頭へ