レポート事例集

気候変動と生物多様性危機は「NbS」がカギ
サステナブル・ブランド国際会議開催報告

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2022年2月24~25日、国内外で活躍するサステナビリティのリーダーが集うコミュニティ・イベント、第6回サステナブル・ブランド国際会議2022 横浜 が開催されました。今回は、気候変動対策と生物多様性保全に同時に取り組む必要性について議論されたセッションをご紹介します。

セッション「気候変動×生物多様性、二つ車輪を同時に進めるわけ」

アサヒグループホールディングスの近藤氏、花王の高橋氏、デロイト トーマツ コンサルティングの丹羽氏による対談では、気候変動と生物多様性の現状や各社の取り組み、課題が紹介されました。

登壇者

  • サステナブル・ブランド国際会議サステナビリティ・プロデューサー、株式会社レスポンスアビリティ代表取締役/サステナブルビジネス・プロデューサー 足立直樹氏
  • アサヒグループホールディングス株式会社 Head of Sustainability 近藤佳代子氏
  • 花王株式会社 ESG活動推進部 部長 高橋正勝氏
  • デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 CG&Eユニット 執行役員/パートナー 生物多様性に関する包括的戦略策定サービス担当 モニターデロイト 丹羽弘善氏

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気候変動対策と生物多様性保全に関する各社の取り組み

近藤氏:CO2排出量削減の中長期目標「アサヒカーボンゼロ」では、2050年におけるカーボンニュートラル達成に向けて、2030年までにScope1,2を70%、Scope3を30%削減(2019年比)することを目指しています。昨年英国で開催されたCOP26では自然を活用した社会課題の解決策(NbS※1 )に注目が集まりましたが、弊社では広島県にある社有林「アサヒの森」を適切に管理し、気候変動抑制を推進するとともに生物多様性の保全にも寄与するという好循環を生みたいと考えています。外部専門家の評価のもと、「アサヒの森」の自然資本としての価値を定量化した結果、工場排出量換算で6.2%に相当する量のCO2を吸収していると分かりました。今後、こうした自然資本の価値を事業に結びつける必要があると考えています。

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高橋氏:気候変動に関してはCO2排出量削減という明確なものさしがあるため、2040年までにカーボンゼロ、2050年までにカーボンネガティブという一つの目標に向けて取り組んでいます。一方で生物多様性の取り組みは評価方法が多様なため、一筋縄ではいきません。生物多様性への依存度の面積ベースでの可視化や環境RNAによる生態調査、森林破壊の根本的な原因の解決に向けた小規模パーム農園の支援など幅広いアプローチをとっています。また、これまで技術的にハードルが高かったことからあまり使われなかった食用油の採取後に残る油脂を、独自の技術で洗浄系製品の原材料として活用し、将来的に予想されるパーム油の供給不足問題にも取り組んでいます。

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気候変動と生物多様性に関するグローバルトレンド

丹羽氏:2021年10月に英国で開催されたCOP26で、産業革命以前と比較して平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるための取り組みがさらに推進されました。また、気候変動と生物多様性が密接に関係しているため同時に対策を進める必要性があると指摘され、サプライチェーン全体におけるCO2排出量を減らす必要があるという認識が世界的に広がっています。2022年にはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークとSBTs for Nature(自然SBTs)の初期ガイダンスが公開される予定で、企業が生物多様性に与える正または負の影響の開示や投資家が企業の生物多様性保全の取り組みを評価する動きが加速すると予想されます。

Q. 生物多様性保全と気候変動対策で抱えている課題はありますか?また、今後どのように推進していきたいですか?

近藤氏:原材料の生産地における生物多様性リスクの調査を行っており、調査範囲の拡大や精度の向上、結果を適切にフィードバックする仕組みの整備などが課題として挙がっています。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と同様にTNFDへの対応でも、関連部門を巻き込んで、事業が生物多様性に与える影響、または生物多様性から事業が受ける影響を把握する重要性を社内に周知したいです。

高橋氏:10年計画でパーム小規模農園の支援をおこなっており、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証取得の支援や農薬使用量を減らす技術の指導をしています。農園にとってメリットが大きいと信じて提案していますが、なかなかすぐには信頼してもらえないという難しさがあります。最初の段階で納得してもらえるまで説明をすることが重要だと感じています。また、気候変動対策と比較して生物多様性保全は消費者が生活で何をすべきか分かりにくいという現状があるため、弊社の製品を使うことで気候変動抑制と生物多様性保全につながるという形で訴求したいと考えています。

丹羽氏:日本は気候変動対策の取り組みでは、地理的要因で再生可能エネルギーの導入が難しいことから他国と比べて遅れてしまっています。一方で、日本は山、河川、海洋資源などが豊富であるため、生物多様性保全においては日本企業が世界で存在感を発揮できるのではないかと期待しています。

本セッションのポイント

気候変動と生物多様性危機の課題はこれまで切り離して考えられてきましたが、両課題が密接につながっているという認識が、国際的に広がっています。大規模太陽光発電所の建設のために、生態系豊な里山を切り崩すというようなトレードオフの関係性ではなく、自然資源をNbSとして活用し、気候変動対策と生物多様性保全を相互に解決することが期待されています。

※ 1 IUCNによると「社会課題に効果的かつ順応的に対処し、人間の幸福および生物多様性による恩恵を同時にもたらす、自然の、そして、人為的に改変された生態系の保護、持続可能な管理、回復のため行動」と定義されています。グリーンリカバリーにおける重要な課題の一つとしても位置付けられています。

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