レポート事例集

法制度化が進む人権課題、先進企業の対応
サステナブル・ブランド国際会議開催報告

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2022年2月24~25日、国内外で活躍するサステナビリティのリーダーが集うコミュニティ・イベント、第6回サステナブル・ブランド国際会議2022 横浜 が開催されました。今回は、サプライチェーンにおける人権尊重をテーマとして行われたセッションをご紹介します。

セッション「サプライチェーンの鍵、 人権をどう守るか」

EYの名越氏、三井不動産の山本氏、日本ロレアルの谷氏による対談では、サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの動向や各社の取り組みが紹介されました。

登壇者

  • 認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ 事務局次長、 ビジネスと人権リソースセンター 日本リサーチャー&代表 佐藤暁子氏
  • 日本ロレアル株式会社 財務・管理本部 購買部 パーチェシングマネージャー 兼 人権コレスポンデント 谷亜由美氏
  • EY 気候変動・サステナビリティサービス シニアマネージャー 名越正貴氏
  • 三井不動産株式会社 サステナビリティ推進部 部長 山本有氏

サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの動向の共有

名越氏:国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の採択から10年が経過し、人権の国際政策への組み込みが加速しており、EUでは人権と環境に関するデューデリジェンスを義務付ける法制化に向けて動いています。海外で人権に関する法制化が進むと、日本企業が人権リスクを理由に市場から排除されるという懸念があります。2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードや2022年夏頃に公表予定の人権デューデリジェンス実施のための指針によって、人権尊重の取り組みが国内でもさらに加速する見込みです。

人権デューデリジェンスに関する各社の取り組み

山本氏:国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って、人権方針を2020年に策定し、2021年には人権デューデリジェンスを実施しました。人権デューデリジェンスでは、深刻度と発生可能性で評価して重要な人権課題を絞り込み、建設会社6社へのアンケート、2つの建設現場での現地調査を実施しました。その結果、重点課題として外国人技能実習生を含む下請け企業での強制労働の禁止、健康安全管理、原材料の責任ある調達などが挙がり、それぞれの課題への対応策を検討しました。

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谷氏:ロレアルは、人権の尊重はビジネスよりも優先されるべきであるという考えのもと、人権に取り組んでいます。2020年に発足したサステナビリティプログラム「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」では、「まもる」、「よい影響をもたらす」、「エンパワーする」の3つを柱とした持続的な調達戦略を推進しており、特に「まもる」は人権尊重で最も重要であると考えています。原材料を調達する際、全ての取引先に対して児童労働や強制労働の禁止・防止に関する倫理綱領への書面での合意を要求しているほか、調達先の倉庫や工場における第三者機関による社会監査の実施、人権の苦情処理メカニズムの整備もしています。

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Q. 最初からスムーズに人権の取り組みを推進するのは難しいと思いますが、どのように乗り越えてきましたか?

山本氏:世の中の人権への関心が高まり、人権に十分に取り組んでいない企業は投資家をはじめとするステークホルダーから評価されにくくなっていると思います。それに応じてトップ層が素早い判断をしたことで、スムーズに人権方針の策定や人権デューデリジェンスの実施をすることができました。

谷氏:弊社の経営理念と人権尊重は密接に結びついているため、人権に取り組むための動機づけにほとんど障壁はありませんでした。しかし、取引先とのやり取りでは弊社が求める厳しい基準に書面で合意していただく必要があるため、納得してもらえるよう十分な説明を心がけています。

本セッションのポイント

国際的に人権尊重に関する取り組みの重要性が高まっており、日本も対象の例外ではありません。企業が把握できていない人権リスクが顕在化すると、株主評価の著しい低下、消費者の不買運動などにつながる可能性があります。社内だけでなく、資源の調達先や下請け工場など広範囲のサプライチェーンにおよぶ人権リスクを特定、防止、対処する必要があるのです。

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