CSRコミュニケーションQ&A

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統合ストーリー、価値創造ストーリーとは何でしょうか。――(6)統合報告書の作成[2]

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統合報告書は開示資料ですが、データだけを並べているものではありません。企業が持続的成長を果たすためにどのように取り組んでいるかを投資家に知ってもらうための資料です。そのため、投資家にとって読みやすく、理解しやすく、印象に残る説明方法が求められます。IRの世界では、1つの物語として全体をまとめる「ストーリー」という手法が採られます。

単純に、6つの資本、ビジネスモデル、事業活動、重要なリスクと機会、成果物(商品とサービス)などを、項目別に列挙していくだけでは印象に残りません。投資家が求めるのは、以下の流れに沿った経営のストーリーです。

1)経営を取り巻く環境の変化(メガトレンド)は何か
2)どのような未来を創造しようとしているのか、企業理念、事業目的は何か
3)どういうビジネスモデルで、どのように価値を創造するのか、どのような道筋(戦略)で未来を創造しようとしているのか、必要な経営資源(資本)は何か、どのように統治していくのか
4)その道筋における重要な機会とリスクは何か
5)戦略の進度を確認するためのKPIは何か、目標数値は何か、これまでにどこまで進んだか、今、その道筋のどの辺りにいるのか

事業目的を達成するためのストーリーを、財務情報、非財務情報を統合してわかりやすく印象的に整理していくことが重要です。投資家の“心に刺さる”ストーリーができれば、統合報告書の作成も容易になります。

実は、投資家の心に刺さる統合ストーリー、価値創造ストーリーは、社員の心にも響くストーリーとなります。多くの社員にとっても、自社の事業目的、理念、ビジネスモデル、戦略、リスクと機会、KPIなどが理解され共有化されますので、自らの業務を見直すきっかけとなり、全社の社員のベクトルを合わせることにもつながります。


    回答者:山崎 直実氏

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    一般社団法人 株主と会社と社会の和 代表理事。
    IR/ESG/コーポレートガバナンス コンサルタント。
    長年、消費財メーカーでコーポレートガバナンス、ディスクロージャー、株式実務を統括。機関投資家やSRI調査機関などと対話を重ね、ESGコミュニケーションを推進。2014年に独立し、女性を中心とした個人投資家にESG投資やエンゲージメントを促進するための一般社団法人を設立。
    経産省「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト委員。

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