環境報告書/CSRレポート2004 白書
地球と社会と企業のつながりを深めるコミュニケーションの“プロセス(過程)”への参加を
弊社では2002年から当白書を発行しており、今回で3年目となる。この間、環境報告書は大きく変化した。
もともと企業の環境負荷削減活動について報告することが環境報告書の目的であったが、周知の通り、全世界で適用可能な報告書のガイドライン作りを推進するGRI(Global Reporting Initiative)による「GRIサステナビリティ・リポーティング・ガイドライン」において「経済」「環境」「社会」の3つの分野について報告を奨励し、その結果、環境省の「環境報告書ガイドライン2003」においても環境報告に加え、社会性報告の項目が追加された。この背景には、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)への関心の高まりがあることは言うまでもない。また、財務面だけでなく、環境や社会への取り組みを考慮し、投資先を決定するSRI(Social ResponsibilityInvestment:社会的責任投資)の拡大も挙げられる。
社会性報告の主な内容は、顧客の安全衛生、公正な取引、社員の労働条件、地域社会への貢献活動などが挙げられる。これからもわかるとおり、報告書は今や企業活動全般におよぶものとなっている。
当白書のサマリーにおいて筆者が再三繰り返し述べてきていることだが、報告書は発行企業にとって地球と社会とのつながりを考える“気づき”を与え、ステークホルダーとのコミュニケーションを深めるための原動力である。
報告書を作成する過程で、企業は幅広い情報を収集し、それらを編集しなければならない。こうした作業の過程(プロセス)において、どのようにすれば情報を開示できるか、そもそも問題に対する具体的な行動をとっていないのでは——などといった課題に直面するはずだ。これは、まさしく企業経営のP(Plan:計画)-D(Do:実施)-C(Check:点検)-A(Action:改善)サイクルの“-C(Check:点検)”にあたり、さらにはサイクルの原動力である“理念(ビジョン)”がどうあるべきかという議論にまで発展するであろう。
また、報告書で扱う情報量が今後ますます増加し、専門性が増す一方で、すべてのステークホルダー(利害関係者)と報告書のみでコミュニケーションを図ることは困難になってきている。このジレンマを打開するためには、報告書を“原作”にステークホルダーの関心度に合わせ、異なる媒体(Web、ダイジェスト版冊子、広告、イベントなど)に“再編集”することがますます重要になると、筆者は考える。
専門的な内容が多く、わかりづらいと批判されることが多い報告書だが、この批判を聞くたびに筆者は数年前の報告書をテーマにしたシンポジウムにおけるパネリストの言葉を思い出す。「あえて申し上げますが、ギャップはあって当然のもの。そこから“なぜ”という疑問を問いかけることで、コミュニケーションは始まるのではないでしょうか」。
また、「経済」「環境」「社会」の三重の決算(トリプル・ボトムライン)の提唱者ジョン・エルキントン氏が代表を務める英国のコンサルティング会社サステナビリティ社のアソシエート・ディレクター、ジュディ・クゼゥスキ氏は、雑誌『エコノミスト』のCSR批判記事に対しこう述べている。「CSRはまだ未発達の初期段階です。しかし、実例を調べるよりも偏見を助長した『エコノミスト』の調査は、この未成熟の赤ん坊を、まるで風呂の水に投げ入れることを選んだようなものなのです」。
1997年にUNCTAD(国連貿易開発会議)が提出したあるレポートでは、こんな一文が記されている。「環境報告書は90年代に始まった現象である」。日本で報告書の発行が始まったのは90年代の半ば、つまり報告書の歴史はようやく10年を過ぎたところである。ジュディ氏が述べるように始めから否定するのではなく、企業も私たちステークホルダーも“非財務面”におけるコミュニケーションの過程(プロセス)に参加し、ともに発展させていくことが重要なのではないだろうか。
株式会社YUIDEA(旧:株式会社シータス&ゼネラルプレス)企画調査室
主任研究員/シニアプランナー
筑紫 透
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