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ISO 26000

Ⅰ. 正式名称

ISO 26000:2010

Ⅱ. 概要

■ 発行者

ISO(International Organization for Standardization)
http://isotc.iso.org/livelink/livelink/fetch/2000/2122/830949/3934883/3935096/home.html

※ 平成22年度までは、(財)日本規格協会に設置されたISO/SR国内委員会 が日本国内の事務局を担っていた。平成23年度以降は、ISO/SR国内委員会を解散し、事務局をJISC事務局(経済産業省)とする提案がなされている。(2011年2月16日 第28回ISO/SR国内委員会)

■ 目的

組織の持続可能な発展への貢献を助けることを意図している。法令順守はあらゆる組織の基本的な義務とし、組織の社会的責任の基礎的な部分であるとの認識に立っており、組織が法令順守以上の活動に着手することを奨励している。また、ISO 26000では結果の重要性及び社会的責任に関するパフォーマンスの改善についても重要視している。
なお、ISO 26000はマネジメントシステム規格ではなく、第三者認証を目的としないガイダンス規格である。認証目的、規制や契約のために使用することを意図したものではない。また、社会的責任の分野における共通の理解を促進することを意図し、社会的責任に関する他の文書やイニシアチブを補完することを意図しており、それらに取って代わろうとするものでもない。

■ 対象

規模又は所在地に関係なく、あらゆる種類の組織(企業、公的団体、民間団体、NPO/NGOなど)が対象となっている。ISO 26000の適用にあたっては、国際行動規範との整合性をとりつつ、経済状況の違いに加えて、社会、環境、法、文化、政治及び組織の多様性を考慮に入れることができる。
ただし、ISO 26000はガイダンス規格であり、その使用については任意となっている。

■ 内容

序文、箇条1から箇条7、附属書で構成されている。それぞれの内容は、箇条1:適用範囲、箇条2:用語及び定義、箇条3:社会的責任の理解、箇条4:社会的責任の原則、箇条5:社会的責任の認識及びステークホルダーエンゲージメント、箇条6:社会的責任の中核主題に関する手引、箇条7:組織全体に社会的責任を統合するための手引、附属書A:社会的責任に関する自主的なイニシアチブ及びツールの例、附属書B:略語となっている。
序文から箇条4は、ISO 26000に関しての根本の部分が述べられている。箇条4では社会的責任の7つの原則(説明責任、透明性、 倫理的な行動、ステークホルダーの利害の尊重、法の支配の尊重、国際行動規範の尊重、人権の尊重)についての手引きが示されており、箇条6で記述される各中核主題に特有の原則とともに、この7つの原則を尊重すべきとしている。
箇条5では、社会的責任の2つの基本的な慣行として、組織による自らの社会的責任の認識とステークホルダーの特定及びそのステークホルダーとのエンゲージメントについて、実践するための方法が示されている。
箇条6では、社会的責任に関する7つの中核主題(組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティへの参画及びコミュニティの発展)を挙げ、各主題について課題とその課題に関連する行動及び期待を列挙している。
箇条7では、社会的責任を組織内で実践するための手引きが示されている。社会的責任におけるコミュニケーションについてもここに記載されており、その役割、情報の特性、種類などが示されている。
附属書に関して、附属書AではGRIガイドライン、AA1000シリーズ、また国連グローバル・コンパクトなど、国際機関や民間団体の社会的責任に関する利用可能なガイドライン、プログラムなど自主的な手引きの例を追加的に示している。

■ 沿革・今後

この規格の策定は他のISO規格での通常のプロセスと大きく異なっている。社会的責任の対象があらゆる組織としていることから、発展途上国と先進国のバランスを配慮した90カ国以上の国、地域の6つの異なるステークホルダーグループ(政府、産業界、労働界、消費者団体、NPO/NGO、専門家等その他)を代表した委員会組織で検討された。ステークホルダー間や途上国と先進国の利害・意見調整などが難航し、通常の規格策定期間を大幅に上回り策定までに6年の歳月を要し、2010年11月1日に発行された。
今後の予定として、ISOのルールでは発行してから初回は3年後、それ以降は5年間隔でISOメンバーによる定期見直しの投票が行われ、(1)確認(技術的変更を伴わない維持)、(2)修正又は改正(変更を伴う支持)、(3)廃止のいずれかが決定されることとなっている。

2001年年 ISO理事会でCSR規格作成の検討をISO/COPOLCOに要請
2003年 ISO/TMB/SAGにおいて、名称をCSRからSRに変更
2005年 第1回ISO/TMB/WG on SRサルバドール総会
2006年 GRIガイドライン第3版発行
2008年 第6回ISO/TMB/WG on SR サンチャゴ総会
ISO 26000委員会原案(CD) 回付
2009年 委員会原案への各国コメントの提出(3月)
第7回ISO/TMB/WG on SR ケベック総会(5月)
2010年 ISO26000発行(11月)
2012年 ISO26000国内規格としてJIS Z 26000:2012が制定される(3月)(※)

※ JIS Z 26000:2012 について
正式発行以来、ISO 26000を国内規格(ガイダンス規格)として採用したり、第三者認証が可能な形で国内規格を独自開発したりする国が見られた。日本ではISO 26000の内容を国内により広く普及することを目的に、2012年3月21日に国際一致規格としてJIS Z 26000:2012が制定された。ISO 26000から変更された箇所は、解説が付け加えられ付属書Aに日本国内のイニシアチブが追記されるなどにとどまり、技術的内容と構成は変更されていない。従ってこの規格も認証と目的としたものではなく、認証のために使用することは適切ではないとされている。

Ⅲ. 企業の対応

正式発行以前から原案段階のものを参考にしていた企業を中心に、CSRレポートの構成や内容にISO 26000を反映させている企業が見られる。
具体的には、自社のCSR活動とISO 26000を照らし合わせてCSRマネジメントの中に組み込んでいる事例や、従来のステークホルダーごとの構成を7つの中核主題ごとの構成に変更する事例、構成は従来どおりで関連する中核主題を示すアイコンを付記する事例などがあげられる。また、GRIガイドラインのように対照表を掲載したりインデックスとして使用する企業も見られた。