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統合報告書を初めて作る方へ

YUIDEAは2000年ごろからサステナビリティ領域に携わり、企業レポートティングの支援を行っています。延べ1000社以上のレポート制作を支援し、企業のレポートご担当者さまのお悩みを解決してきました。そのなかには、レポート発行が初めてという企業やご担当者も少なくありません。
実際の制作の場面では、企業ごとの活動状況や体制などを考慮して制作プランを立てていきますが、「統合報告」の概念の理解は必要不可欠です。このページでは、統合報告書制作の際に直面する「”統合報告”とは?」の疑問にお答えします。

「統合報告」とは

2013年に「国際統合報告フレームワーク」を国際統合報告評議会(IIRC)が公表して以来、国内でも「統合報告書」と表明するコミュニケーションツールを発行する企業が増加しています。

実は、「統合報告」というは、レポートなどの冊子媒体だけを指すものではありません。自社の企業価値をどう捉え、どのように戦略的なコミュニケーションを設計していくのか?をよく検討する必要があります。このページでは、IIRCのフレームワークも含め「統合報告とは何か」についての解説をします。

【【関連ページ】統合報告書作成の標準ガイドラインともいえる「国際統合報告フレームワーク」については こちら

統合報告の概念

グローバル化の進展、社会課題の変化などにより、企業が事業を営む環境は大きく変化しており、財務資本提供者(投資家)が投資先を評価するために必要となる情報も広範になってきています。

そこで国際統合報告評議会(IIRC)は、「国際統合報告フレームワーク」を公表しました。このフレームワークでは、統合報告書発行の目的は「財務資本の提供者に対し、組織がどのように長期にわたり価値を創造するかを説明すること」と位置付けています。

また、フレームワークでは、「統合思考」に基づいた「統合報告」が求められ、その中で中心となるものが「統合報告書」であるとし、下記のように定義しています。

  • 「統合思考」とは、組織と組織が影響を与える資本(ビジネスモデルへのインプットとなるもの。自然資本なども含む。)との関係を能動的に考えることであり、短・中・長期の価値創造を考慮した、統合的な意思決定および行動に結び付くものである。
  • 「統合報告」とは、統合思考を基礎とし、組織の長期的にわたる価値創造に関する定期的な統合報告書と、これに関連する価値創造の側面についてのコミュニケーションにつながるプロセスである。
  • 「統合報告書」とは、組織の外部環境を背景として、組織の戦略、ガバナンス、実績、および見通しが、どのように短・中・長期の価値創造につながるかについての簡潔なコミュニケーションである。
【Point】 「統合報告書」を発行するには「統合思考」に基づいて「統合報告」というプロセスを構築することが先決

The evolution of corporate reporting―企業報告の進化(引用元:IIRCディスカッションペーパー
「TOWARDS INTEGRATED REPORTING―Communicating Value in the 21st Century」p.6~7 2011 IIRC)

現金や建物など従来の財務諸表に掲載されるものだけでなく、水や空気・地域コミュニティへのインパクトといった、組織の価値創造に関わるさまざまな要素を考慮し、その中から重要な情報を簡潔にまとめ、統合報告書などで開示することが求められています。

統合報告を中心に経営者の解説、ガバナンスと役員報酬、財務諸表、サステナビリティ情報などを、法定開示・自主開示の情報開示ツール・メディアを使い分け、情報の散乱・重複を解消することが期待されています。

日本企業の主な情報開示ツールの分類(一例)


ステークホルダーとのエンゲージメント

以上のようにIIRCのフレームワークでは、統合報告書を財務資本の提供者(投資家)を主な利用者とし、重要な情報を簡潔に報告するためのものなので、お客様、従業員、取引先、地域社会といった他のステークホルダーが知りたいことに十分に応えられません。

そのため、別途CSRや環境を中心としたサステナビリティレポート等の冊子やwebサイトを活用して、開示情報の充実やコミュニケーションの活性化を図ることは引き続き求められます。

各ステークホルダーと良好な関係を築き、知的資本、社会関係資本、自然資本、ブランド価値、社会的評価といった無形資産を形成することが、企業価値の向上と持続可能性につながります。したがって、投資家向けのコミュニケーションにおいて「統合報告書」が主流になったとしても、さまざまなコミュニケーションツールを引き続き活用し、各ステークホルダーとのエンゲージメントを高めていくことは企業経営に欠かせない活動なのです。

【Point】 様々なツールを使った投資家以外のステークホルダーとのエンゲージメントも、中長期的な企業価値につながる。

統合報告のステップ

統合報告書の基礎となる統合思考を実現するには、組織内で横断的にコミュニケーションをとり、経営戦略として構築していくことになります。当然、時間と労力を要するため、まずはコミュニケーションツールの一本化からとりかかるのも1つの方法です。報告サイクルごとに「理念」「戦略」で「傘」をかけ、「戦略ストーリー」で統合する、といったステップを踏んでいくことで、統合思考の実現につながることが期待できます。


統合報告の活用

統合報告は、上記の通り投資家とのエンゲージメントです。
中長期でいかに企業価値を向上させていくのかを、過去から現在、そして未来にかけての時間軸の中で、財務情報と非財務情報を統合させる形で、投資家に理解と納得を得るべく丁寧かつ簡潔に解説することが求められます。

特に、納得を得るためには、経営者が自身の言葉で語る必要があります。例えばCEOが企業の中長期的なありたい姿と、企業全体のビジネスモデル、機会とリスクを。
CFOが財務戦略(今年度の財務諸表の解説だけでなく、中長期的な「戦略」)を、各事業の担当役員が当該事業の戦略を、是非、自身を主語に責任を持って語っていただきたいと思います。

その上で、投資家に対して企業側から統合報告書を一つのツールに積極的にアプローチし、投資家の意見や疑問に耳を傾け、真摯に応えていくことが、あるべきインベスターリレーションといえます。
このエンゲージメントの構築の過程を経ることで、毎年統合報告の精度も高まり、投資家にとってより魅力的な統合報告になっていきます。