統合報告

統合報告とは

英国発祥の国際統合報告評議会の活動から、「統合報告」に関心が高まっています。国内でも「統合報告書」と題するコミュニケーションツールを発行する企業が増加しました。しかし「統合報告」とはツールの方法論に限られた話ではありません。そこで、企業価値をどう捉えるか、どのように戦略的なコミュニケーションを設計するか、という本来の焦点について解説します。

統合報告の概念

グローバル化の進展・世界的に広がる政策への対応など、企業が事業を営む環境は大きく変化しており、財務資本提供者が投資先を評価するために必要となる情報も広範になってきています。

そこでIIRC(国際統合報告協議会)は、「組織がどのように短、中、長期的に価値を創造するか」を説明するための「国際統合報告フレームワーク」を公表しました。

このフレームワークでは、「統合思考」に基づいた「統合報告」が求められ、その中で中心となるものが「統合報告書」であるとし、下記のように定義しています。

  • 「統合思考」とは、組織と組織が影響を与える資本(ビジネスモデルへのインプットとなるもの。自然資本なども含む。)との関係を能動的に考えることであり、短・中・長期の価値創造を考慮した、統合的な意思決定および行動に結び付くものである。
  • 「統合報告」とは、統合思考を基礎とし、組織の長期的にわたる価値創造に関する定期的な統合報告書と、これに関連する価値創造の側面についてのコミュニケーションにつながるプロセスである。
  • 「統合報告書」とは、組織の外部環境を背景として、組織の戦略、ガバナンス、実績、および見通しが、どのように短・中・長期の価値創造につながるかについての簡潔なコミュニケーションである。
【Point】 「統合報告書」を発行するには「統合思考」に基づいて「統合報告」というプロセスを構築することが先決

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The evolution of corporate reporting―企業報告の進化(引用元:IIRCディスカッションペーパー
「TOWARDS INTEGRATED REPORTING―Communicating Value in the 21st Century」p.6~7 2011 IIRC)

現金や建物など従来の財務諸表に掲載されるものだけでなく、水や空気・地域コミュニティといった、組織の価値創造に関わるさまざまな要素を考慮し、その中から重要な情報を簡潔にまとめ、統合報告書などの形式で開示することが求められています。

将来的には、統合報告を中心に経営者の解説、ガバナンスと報酬、財務諸表、サステナビリティレポートなど法定開示・自主開示の情報開示ツール・メディアを使い分け、情報の散乱・重複を解消することが期待されています。

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日本企業の主な情報開示ツールの分類(一例)

概念のポイント

統合報告では、組織にとって重要な情報が簡潔に開示されることになるため、報告書の利用者は必要な情報に効率的にアクセスできるようになります。

しかしながら、IIRCのフレームワークは財務資本の提供者である投資家を主な利用者とし、重要な情報を簡潔に報告するためのものなので、お客様、従業員、取引先、地域社会といった他のステークホルダーのニーズに対応できないおそれがあります。

そのため、別途CSRや環境を中心とした冊子やwebサイトを活用して、開示情報の充実やコミュニケーションの活性化を図ることは引き続き求められます。

お客様、従業員、取引先、地域社会などのステークホルダーと良好な関係を築き、知的資本、社会関係資本、自然資本、ブランド価値、社会的評価といった無形資産を形成することが、企業価値の向上と持続可能性につながります。したがって、投資家向けのコミュニケーションにおいて「統合報告書」が主流になったとしても、さまざまなコミュニケーションツールを引き続き活用し、各ステークホルダーとのエンゲージメントを高めていくことは企業経営に欠かせない活動なのです。

【Point】 投資家以外のステークホルダーとのエンゲージメントも企業価値に影響する

会社案内との統合

アニュアルレポートではなく、会社案内とCSRレポートを統合する事例も見られます。この場合、「CSR・会社案内」はマルチステークホルダーを対象とした総合コミュニケーションツールと位置付け、別途アニュアルレポートや環境報告書など、目的別の冊子を用意することが期待されます。会社案内とCSRレポートの利用目的や方法に共通点が多い場合、1冊にまとめることで効率化を図ることができます。

アニュアルレポートおよび会社案内との統合

稀に、CSR報告書・アニュアルレポート・会社案内の3種類のコミュニケーションツールを1冊に合本する事例もみられます。CSR情報と財務情報を理解するには、企業のプロフィールを把握することが前提となり、いずれも会社概要の要素が盛り込まれているため、発信する情報の重複を避けるという点では有効といえます。反面、情報の幅が広くなるため読者が必要な情報にアクセスしやすくなるような配慮が必要です。

企業の対応

統合報告書の基礎となる統合思考を実現するには、組織内で横断的にコミュニケーションをとり、経営戦略として構築していくことになります。当然、時間と労力を要するため、まずはコミュニケーションツールの一本化からとりかかるのも1つの方法です。報告サイクルごとに「理念」「戦略」で「傘」をかけ、「戦略ストーリー」で統合する、といったステップを踏んでいくことで、統合思考の実現につながることが期待できます。

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統合へのロードマップ

上述のとおり一言に「統合報告書」と言っても、アニュアルレポートと統合しているもの、会社案内と統合しているものなどがあります。

アニュアルレポートと統合している事例

日本郵船株式会社
Bringing Value to Life NYKレポート2013

ローソン株式会社
INTEGRATED REPORT 2013 ローソン統合報告書

株式会社LIXILグループ
Diverse by Design アニュアルレポート2013

三菱商事株式会社
アニュアルレポート2013 Realizing OUR VISION for 2020

ANAホールディングス株式会社
マテリアリティ(重要性)の特定

このほか、ESGコミュニケーション・フォーラムのサイトにレポートのリストが掲載されている。
「国内レポート情報」企業リスト

会社案内と統合している事例

株式会社村田製作所
M u r a t a R e p o r t 2013

東京ガス株式会社
CSR・会社案内2013

コスモ石油株式会社
コーポレートレポート2013

マツダ株式会社
マツダ会社案内・マツダサステナビリティレポート【ダイジェスト版】2013

株式会社朝日新聞社
CSR報告書・会社案内2013

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