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水道水の質をアピール。ウェイターらがパリの街を駆け抜ける「カフェ・レース」でプラ削減を促進

パリの街角といえば、カフェのテラス席でくつろぐ人々を思い描く人も多いのではないだろうか。忙しい日常生活の中でひとときの安らぎを求める場所として、また地域の人たちのたまり場として、長年愛されてきたカフェは、パリの文化ともいえる。

そんなパリで今話題になっているのが、2024年3月24日に開催される、カフェのウエイター・ウェイトレスの給仕スキルを競うレースだ。1914年に、ウェイターという職業の認知度を高めるため、パリで初めて開催されていた「la Course des cafés(カフェ・レース)」は、その後世界に広がり、現在では日本を含め、アルゼンチンやアメリカなど53か国で開催されている。

パリのカフェ・レースは、2011年以降スポンサー不足により開催をストップしていたが、オリンピックを間近に控えたパリ市と、パリの水を管理する水道公社がスポンサーとなり、13年ぶりに開催されることになった。多くの人が訪れる国際大会を前に、パリのカフェ文化とサービス業を盛り上げ、パリの水道水の質を世界にアピールすることでペットボトルのゴミを削減する狙いだ。

Eau de ParisのXより

レースに参加できるのは、ホテルやカフェ、バーなどのサービス業で働く人々だ。男女とも白いシャツと黒いズボン、そして主催者から支給されるエプロンを着用し、伝統的なウェイターの装いで、パリのカフェ文化と質の高いサービスの宣伝を担う。

スタートとゴールは、オリンピックのマラソン競技と同じパリ市庁舎だ。レースの参加者は、マレ地区の小道約2キロメートルを、トレーに乗せたコップ一杯の水道水、コーヒー、クロワッサンを、片手でこぼさずに歩き、ベストタイムを競う。走ったら失格となり、ドリンクがこぼれた場合は減点される。当日は約200名が参加すると見込まれており、沿道からの応援でイベントを盛り上げるよう市民に呼びかけている。

この夏のオリンピックで、パリ市は史上初の「使い捨てプラスチックゼロの大会」を目指す。市内競技場へのペットボトル持ち込み禁止や、再利用可能なカップの準備などを進めているが、このカフェ・レースを通して、多くの人にパリの水道水が飲料に適していることを知ってもらうことで、ペットボトル飲料の大きな削減が期待できるだろう。

フランスでは、2022年1月1日に施行された「食品廃棄物と循環経済と闘うための法律」により、飲食店で何を注文したかによらずコップ一杯の水を要求できるようになった。パリ市では、2022年3月に「Ici, je choisis l’eau de Paris(ここで、私はパリの水を選ぶ)」キャンペーンを開始し、これまで整備してきた屋外の給水所に加え、カフェやレストラン、美容院、衣料品店などでマイボトルの給水を可能にするネットワークも広がっている。

給水ポイントの場所は、水道公社がオンラインで提供する詳細マップで、パリ市内にある1,200の給水所や、1,000を超えるキャンペーン賛同ショップの位置を確認することができる。また、グーグル・マップに「fontaine à eau Paris(パリの給水所)」と入力することでも検索できるという。旅行者でも気軽に利用できるシステムは、ペットボトル削減のために効果的な方法の一つと言えるだろう。

この青いシールの店舗で給水が可能

3月22日は、国連が定めた「世界水の日」だ。世界中で水のアクセスや安全性、水資源の保護に関する問題に焦点を当てるイベントが開催される。国土交通省によれば、水道の水をそのまま飲める国は日本を含めて11か国、そのまま飲めるが注意が必要な国は29か国(※)とのこと。この数字をみると、せっかく安心して水道水が飲める国にいるのなら、わざわざペットボトルの水を購入してごみを増やすことはないだろうと思えてくる。

パリのカフェ文化とサービス業界の重要性を再確認し、水資源と廃棄物のつながりについて考える貴重な機会となるカフェ・レース。パリ市と水道公社によるバックアップで、今後も継続されることを願いたい。

※ 国土交通省「令和5年版 日本の水資源の現況 第7章」


【参照サイト】パリ市「Remise à flot, la Course des cafés verra s’affronter 200 serveuses et serveurs」
【参照サイト】パリ水道公社「Ici, je choisis l’eau de Paris」
【参照サイト】パリ水道公社「Participez à la Course des cafés」

2024/3/22
IDEAS FOR GOOD
[原文はこちら]

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