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IIRCの価値創造プロセスにSDGsを組み込むには?

SDGsの達成には企業の貢献も少なからず期待されていること背景に、IIRCは 「The Sustainable Development Goals, integrated thinking and the integrated report」というレポートを公表しました。

このレポートでは統合報告フレームワークの価値創造プロセスを通じてSDGに貢献するための5つのステップが提示されており、開示事例なども紹介されています。

そこで、ここではこのレポートの内容について、説明していきたいと思います。

SDGsと統合報告

P14では、SDGsと統合報告の関連性について、国際統合報告フレームワークの6つの資本との関連図が紹介されています。 「組織によって関連するゴールは異なる」としたうえで、組織の事業活動とアウトプットの結果としてもたらされた「アウトカム」として創出された各資本が、17のどのゴールに結びつくのかが整理した図が示されています。

  • 財務資本:SDGsの目標3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17
  • 製造資本:SDGsの目標2、4、6、7、9、11、12、13、14、17
  • 知的資本:SDGsの目標3、6、7、10、12、13、14、16、17
  • 人的資本:SDGsの目標3、4、5、6、7、8、10、12、13、14、16、17
  • 社会・関係資本:SDGsの目標1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、17
  • 自然資本:SDGsの目標2、6、7、11、12、13、14、15、17

5つのステップ

P23以降では、各ステップについて説明されています。

Step1:組織の外部環境に関連した、持続可能な発展に関する課題を理解する
(Understand sustainable development issues relevant to the organization’s external environment)
  • SDGsなどの課題について検討する際には、組織の価値創造能力に関連する外部環境を幅広く組み込みます。
  • 統合報告フレームワークの<4.7>で示されている外部環境の事例には「健康などの社会的課題」「気候変動などの環境課題」などが示されており、これらはSDGsに関連します。
Step2:組織が価値を創造し続けていくために重要となる課題を特定する
(Identify sustainable development issues that are material to the organization’s ability to create value)
  • SDGへのアプロ―チを検討する際、組織はミッションや目的と照らしてどのSDGに貢献するのが最適か、優先順位をつけます。
  • その際、リスクの低減と機会の創造、6つの資本の最大化、SDGのターゲットへの貢献度合いなどを考慮します。
Step3:ビジネスモデルを通じて、SDGsに貢献する戦略を立てる
(Develop strategy to contribute to the SDGs through the business model)
  • 組織はビジネスモデルを通じて、特定したSDGに貢献する戦略を立てます。
  • これには、リソースの配分計画や具体的で定量化された短・中・長期目標を含めます。
Step4:統合思考、接続性、ガバナンスを発展する
(Develop integrated thinking, connectivity and governance)
  • Step3で立てた戦略に責任を持つガバナンス組織の担当者を特定し、協力が欠かせないステークホルダーとの関係構築を図ります。
  • 組織のビジネスモデルは、6つの資本全てに影響する重要なSDGを網羅するようにします。
Step5:統合報告書を作成する(Prepare the integrated report)
  • 組織はステークホルダーと、短・中・長期的な価値創造に影響を及ぼす、持続可能な発展に関する課題について報告します。
  • 組織は6つの資本に関するアウトカムとともに、SDGターゲットへの貢献についても報告します。

各Stepでは、「国際統合報告フレームワーク」において関連する内容と、実践に向けた内容が記載されています。

価値創造の企業戦略をSDGsと連携させている事例

レポートの中では、以下のような優良事例が紹介されています。

  • SDGsを企業の戦略に照らして、取り組みの優先順位を付けている事例(7社)
  • SDGsへの貢献を、アウトカムと結び付けている事例(4社)

例えば、優先順位を付けている事例として紹介されている「Grupo Nutresa」では、マテリアリティ分析の結果とSDGsを結び付けて開示しています。

「SDGコンパス」との違い

SDGsに取り組む企業向けに、既にGRI、グローバル・コンパクト、WBCSDによる「SDGコンパス」が用意されており、こちらも「ステップ1:SDGsを理解する」から「ステップ5:報告とコミュニケーションを行う」という5つのステップが説明されています。

5つのステップを踏むというプロセスは非常に近いものがありますが、SDGコンパスに比べて今回ご紹介したレポートは、

  • 短・中・長期的な「価値創造」との関連性に集中している。
  • 具体的な企業のレポートも紹介されている。

という点が異なっており、活動のみならず統合報告書を作成する際の参考になります。

【参考】
SDGコンパス

公開日 : 2017年11月08日