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先進企業から学ぶマテリアリティの情報開示

S&Pグローバルが実施するCSA(コーポレート・サステナビリティ評価)はアンケート調査形式で行われていますが、開示エビデンスを要求する向きが年々強くなっています。また、2023年からは回答期間を選択する形式となり、採点の基準も厳しくなる傾向です。CSA評価結果をもとにランキング付けをしたThe Sustainability Yearbook 2023では、伊藤忠商事、住友林業、中外製薬の3社が上位1%の高評価を得ました。

本稿では、高評価を得ている3企業の開示から、マテリアリティの優良事例を考えていきます。

■マテリアリティ

3社のうち、住友林業は2022年にマテリアリティの再特定を行っていました。ほか2社は既存のマテリアリティに関して記述しています。策定プロセスの詳細は異なる部分もありますが、各社ともインパクトの視点を織り込んでいました。

・伊藤忠商事
マテリアリティの策定に関して、「マテリアリティの選定・レビュープロセス」という形で紹介しています。「社会・事業変化に併せて、適宜見直しを実施」とあり、4つの工程がループしているのが特徴です。

マテリアリティ策定プロセス

加えて、アドバイザリーボードにてレビューを実施した際の重要度に関する判断状況や、外部有識者との協議実施についても概要を開示しており、エンゲージメントが十分に行われていることが伝わります。

マテリアリティ項目に対して、定性的ではあるものの社会へのインパクトまで記載されている点も、今後目指すべき開示の要素になるでしょう。指標と目標については、アプローチ、指標、進捗などを一覧表で示していますが、テーマごとの閲覧もできるよう工夫がされており、ユーザーの利便性を考えた開示手法としても参考になる事例といえます。

マテリアリティごとの社会へのインパクト(抜粋)

・住友林業
2022年に策定した長期ビジョンに合わせて、マテリアリティの再特定が実施されました。 再特定のプロセスは図版等を用いず文章のみで説明しています。最初の工程でステークホルダーを巻き込んだアンケート調査を実施し、自社のインパクトを把握。その中から重要度を判断する形で課題を絞り込んでいました。

重要課題の特定方法

再特定された重要課題ごとに、定性的ではありますが「社会・環境へのインパクト」による整理があり、KPIについても定量的な形で3か年分掲載しています。移行期間であるため、前の重要課題に対してもまとめるページを設けていました。

・中外製薬
マテリアリティ策定プロセスを7つに分け、将来予測とリスク・機会の分析からスタートしています。こうした観点に加え、MSCIやFTSEなどESG評価機関の調査項目とのギャップも特定し、「自社がやるべきこと」の漏れがないよう対処しています。

マテリアリティの特定プロセス

特定されたマテリアリティは、アニュアルレポートの中で「成長戦略の柱へ」「成長基盤の強化へ」「継続的な整備・進化を推進」の3種に分類され、戦略に紐づけられています。一方、サステナビリティサイトは、策定プロセスや個別の活動紹介の役割を担っています。

評価向上につながる開示のためには、社内の方針整理や、活動と開示媒体の制作を上手に連動させることが重要です。
また、評価基準は厳密さを増していくことを考えると、追いつく開示ではなく、先を行く開示を目指して、一層の社内整理が求められていきます。

YUIDEAでは、サプライチェーンの分析やそのほかの前提資料作成から、マテリアリティ特定・再特定を支援、また、コンサルティングと制作を一気通貫した支援を行っております。
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