CSRD/ESRSとは?
EUにおけるサステナビリティ開示の一貫性を高めるべく採択されたのがCSRD(企業サステナビリティ報告指令)で、早ければ2024年1月1日に開始する会計年度から適用されます。対してESRS(欧州サステナビリティ報告基準)は、具体的な開示要件を定めたガイドラインです。EU加盟国はCSRDを批准した国内法を定めなければならず、ESRSに沿って開示することは法定開示の位置づけになります。
つまり、ESRSはCSRDの中身にあたる存在です。両者の違いを気にするよりは、関係性を押さえておくのがよいでしょう。
CSRD/ESRSの対象企業
法定開示といっても、対象企業グループごとに段階的な対応期限が設定されています。EU域外企業が義務化されるのは2028年ごろとなる見込みです。しかし、グローバルに展開する企業だと、欧州の子会社が先行して対象となってしまうケースがあります。子会社の事業規模などをよく確認しておきましょう。
>>詳しくは:ESRSの第1弾採択でダブルマテリアリティが法制度化へ
まずはダブルマテリアリティへの対応が最優先
CSRD/ESRSはダブルマテリアリティの原則に基づいて設計されています。ダブルマテリアリティの原則に沿った開示には、インパクトマテリアリティとファイナンシャルマテリアリティ両方の視点が必要です。自社のマテリアリティを外部視点と自社視点の2軸で特定している企業の場合は、ダブルマテリアリティにアップデートすべく、足りない視点を補う必要があります。
人権だけでなく環境など他のトピックに対してもデューディリジェンスを行い、バリューチェーン上のインパクトをしっかり把握しなければなりません。そのうえで事業経営に与えるリスク・機会を評価していくことでダブルマテリアリティが特定されます。
インパクト・リスク・機会の特定の結果、自社に関係のないトピックが出てくるかもしれません。その場合は開示対象から外してよい決まりですが、除外する理由を説明しなければなりません(企業特有のトピックを追加しなければならないケースもあります)。
インパクト・リスク・機会の特定
ESRSの開示要件を見ていくと、「インパクト、リスク、機会を特定および評価するためのプロセスの説明」という項目が頻出します。ESRSにはデューディリジェンスの規定があり、戦略や方針、目標管理などの活動がそれぞれインパクト・リスク・機会とリンクしているかを問われます。
こうした視点は開示要件のいたるところに織り込まれているため、インパクト・リスク・機会の説明をクリアしなければ、開示をうまく組み立てられなくなってしまいます。反対に、しっかりとしたダブルマテリアリティの特定プロセスを踏むことができれば、これらの質問には問題なく答えられるでしょう。
GRIスタンダードとの関係
ESRSの策定にはGRIが深くかかわっており、相互に整合性も意識されています。GRIスタンダードに沿った開示をしていた企業は、開示のベースが出来ているはずです。
最後に
ダブルマテリアリティはCSRD/ESRSだけの概念ではありません。IFRSサステナビリティ基準自体はシングルマテリアリティ(ファイナンシャルマテリアリティのみ)を採用していますが、企業にとってはダブルマテリアリティが重要であることを認めています。ダブルマテリアリティが今後の世界のスタンダードになることは間違いありません。
詳しくは下記の関連記事をご覧ください。