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政府が人権DDガイドライン策定、 海外では義務化の動きが加速

日本政府は2022年9月13日、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しました。人権に関する開示義務化が進む国際的なスタンダードを踏まえ、日本企業において人権デュー・デリジェンス(以下人権DD)をはじめとした人権尊重の取り組みを促進することを目的としています。同ガイドラインは法的拘束力を持ちませんが、潜在的な人権課題に対応するために必要な3つの取り組みを挙げています。

ガイドライン策定の背景

2011年に国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が成立後、海外を中心に企業に対して人権尊重を求める動きが進み、2023年3月時点で26か国がビジネスと人権に関する行動計画を策定しています(日本は2020年10月に策定)。
2021年に東証上場企業を対象に実施された「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」では、回答企業の半数以上が政府によるガイドライン整備を要望していることが分かり、政府はこの状況を踏まえ今回のガイドラインの策定に至りました。

企業に求められる3つの取り組み

同ガイドラインは、日本で事業活動を行う全ての企業に対して3つの取り組みの実施を求めています。

  1. 人権方針の策定・公表
  2. 人権DDの実施
  3. 救済の実施

そのほか、人権尊重の取り組みにあたっての考え方として、経営陣によるコミットメントの重要性やいかなる企業にも潜在的な負の影響が存在すること、ステークホルダーとの対話の重要性などが説明されています。 経済産業省は今後、人権尊重の取り組みの内容をより具体的かつ実務的に解説する附属書を作成することを予定しています。

海外で加速する人権DD義務化の動き

国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が成立してから10年以上経つものの、いまだに企業活動による人権侵害が引き起されています。そのような状況に対応すべく、欧州ではイギリスで制定された現代奴隷法をきっかけに、フランスやドイツが人権DDの実施や開示を義務化しています。EUでも2022年2月に企業持続可能性デュー・デリジェンス指令案が公表されました。同指令は人権・環境DDを義務付けるものであり、その適用対象には一定規模以上のEU域外の企業も含まれるため、日本企業も影響を受けることが予想されます。

日本企業に期待される対応

上述の海外の動向とは異なり、今回日本で策定された「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に法的拘束力はありません。しかし、同ガイドラインにも記載されているように潜在的な負の影響はいかなる企業にも存在するため、同ガイドラインで求められている3つの取り組み(人権方針の策定・公表、人権DDの実施、救済の実施)に直ちに対応するのが望ましいでしょう。

【参考リンク】